ホームページ制作の契約で本当に確認すべきポイント|追加費用と修正回数のもめない決め方

  • -
    コピー
アイキャッチ

ホームページ制作を初めて外注するとき、いちばん怖いのは「後から追加費用を請求されること」ではないでしょうか。
見積もりより高くなった、修正が有料と言われた、こんな話は珍しくありません。
ただ、現場で契約のもめごとを見ていると、原因の多くは悪徳業者ではありません。
発注者と制作者の「認識のズレ」です。
特にもめやすいのが、追加費用と修正回数の二つです。

先に正直にお伝えしておきます。
制作者である私にとって、追加費用を取れる契約のほうが都合がいいのは事実です。
だからこれから書くことには、私の側に不利な情報も含めます。
「制作者に有利すぎる契約」の見抜き方まで正直に書きますので、その前提で読んでください。
この強い前置きはここ一回だけにします。

数字でも裏づけがあります。
株式会社リセが2025年9月に中堅・中小企業の契約書担当者250名へ実施した調査では、約6割が契約トラブルを経験していました。
原因の1位は「契約条項の見落とし・抜け漏れ」で30%、2位は「契約書の内容の理解不足」で28%でした(出典:株式会社リセ/PR TIMES/2025年9月)。
上位はどちらも、悪意ではなく理解のズレから起きるものです。
つまり、契約書のどこを見ればズレを防げるかを知っておけば、トラブルの多くは事前に避けられます。

この記事は「契約書と見積書の確認ポイント」に絞って解説します。
外注する前の社内準備や、制作全体の進み方については別記事にまとめてあります。
あわせて読むと全体像がつかめます。

契約書は「相手を縛る盾」ではなく「認識を揃える地図」

契約書は相手を縛る盾ではなく認識を揃える地図

契約書と聞くと、相手の不利な条項を潰すための武器だと思われがちです。
でも実務での役割は、少し違います。
契約書の本質は、発注者と制作者がズレやすい境界線を、あらかじめ書面で言語化しておくことにあります。

家を建てるときの設計図に近い感覚です。
どこまでが工事に含まれ、どこからが追加工事なのか。
これが図面になっていれば、後から「そこは別料金です」と言われても揉めません。
契約書も同じで、双方が同じ絵を見られる地図になっているかが大事です。

具体的に、揃えておくべき境界線は四つあります。

  1. 作業範囲(何が含まれ、何が追加になるのか)
  2. 追加費用が発生する条件
  3. 修正回数と、その「1回」の定義
  4. 権利の帰属(著作権やデータの所有者)

この四つが書面で同じ絵になっていれば、悪意がなくても起きるズレを防げます。
逆に、ここが曖昧なまま進むと、誰も悪くないのにもめます。
では、なぜこの四つでもめるのか。
まずは追加費用の内情から見ていきます。

なぜ「追加費用」でもめるのか(制作側の内情)

なぜ追加費用でもめるのか

追加費用のトラブルは、たいてい見積もりの段階で芽が出ています。
「デザイン一式」「サイト制作一式」といった、ざっくりした見積もりが危ないのです。

「一式」という言葉は便利ですが、中身が見えません。
スマホ対応、SSL(サイトの暗号化)、原稿の作成、ロゴのデザインなどが代表例です。
こうした要素が「一式」の外に置かれていると、後から「それは別途です」となりやすいのです。
発注者は当然入っていると思い、制作者は入れていないつもりでいます。
この食い違いが、予算超過の正体になります。

現場の感覚として、追加費用が発生しやすいトリガーは二つあります。

一つ目は、デザインに合意した後の大幅な方向転換です。
制作は、一度OKをもらった設計を土台にして次の工程へ進みます。
コーディングも原稿も、その設計を前提に組み上げていきます。
だから、後から方向ごと変えると、土台から作り直しになります。
この作り直しの手間が、追加費用として乗ってきます。

二つ目は、ロゴのデザインです。
ロゴはサイト制作費に含まれないことが多いのです。
サイトを作る作業と、ロゴを一からデザインする作業は、専門性が別だからです。
ところが発注者からすると、サイトを作るならロゴも当然入っているだろう、と感じます。
ここは特に認識がズレやすいところです。

正直に言えば、こうした追加が発生する構造は、制作者にとって都合のいいものでもあります。
だからこそ、発注者の側が「どこから追加になるのか」を契約前に潰しておくと得をします。
追加費用は仕方ないものではありません。
発生する構造そのものを、契約前に消しておけるものです。

「修正回数の1回」とは何を指すのか

修正回数の1回とは何を指すのか

追加費用と並んでもめるのが、修正回数です。
ここで多くの方が誤解しているのは、回数の多さこそ問題だという思い込みです。
本当の火種は、回数そのものではありません。

まず前提として、無償で対応する修正の回数は、制作会社によって異なります。
業界で統一されたルールはありません。
おおよそ2回から3回を目安にする事業者が多い、という程度です。

もめる原因は、回数ではなく「1回の中身」の曖昧さにあります。
たとえば、文章の言い回しを直す、色を少し調整する。
こうした軽微な変更は、回数にカウントしない運用の事業者も多いのです。
一方で、レイアウトを組み直す、デザインの方向性を変える。
こちらは影響範囲が大きく、別途見積もりになりやすい作業になります。

同じ「修正1回」でも、中身によって重さがまるで違います。
だから契約前に握っておくべきなのは、回数の数字ではありません。
何が1回にカウントされるのか、その定義のほうです。
ここを言葉にしておけば、「これも1回に数えるんですか」という後日の言い合いが消えます。

追加費用の目安も示しておきます。
ただし会社によって大きく異なる前提で見てください。
テキスト修正は1箇所あたり1,000円から2,000円程度、画像の差し替えは1枚あたり1,000円から3,000円程度が一つの目安になります。
これは複数の制作会社の料金表を見比べた目安であって、統一された規定ではありません。
金額そのものより、「単価が最初から示されているか」を確認材料にしてください。

契約書で守るべき5項目チェックリスト

契約書で守るべき5項目チェックリスト

ここからは、なぜ揉めるかの話は終わりにします。
契約書のどこを見るか、という実務に徹します。
原因はすでに前のセクションで説明しましたので、繰り返しません。

発注者であるあなた自身を守るための確認項目を、5つにまとめました。
制作者に有利すぎる契約を見抜く観点も、あえて入れてあります。
契約書を受け取ったら、この表を横に置いて一つずつ照らしてください。

確認項目見るポイント危険なサイン
① 作業範囲「一式」でなく、ページ数・機能・スマホ対応・SSL・原稿作成・ロゴの有無まで明細になっているか「サイト制作一式」の一行だけ
② 追加費用追加が発生する条件と単価が書面にあるか「別途応相談」で金額の基準がない
③ 修正の定義無償回数と、何を1回と数えるかが書かれているか「修正数回まで」だけで中身の定義がない
④ 著作権の帰属著作権を発注者へ「譲渡する」と明記されているか帰属の記載が一切ない、または制作者に留保
⑤ サーバー・ドメイン自社名義になるか、管理情報が引き渡されるか制作会社名義のまま引き渡しの記載がない

①から③は、これまで説明してきた内容を契約書で確認するだけです。
作業範囲が明細になっているか、追加費用の条件と単価があるか、修正の定義と無償回数が書かれているか。
この三つを一行ずつ確かめてください。

問題は④の著作権です。
ここは誤解している方がとても多いところになります。
制作費を全額払っても、著作権は自動的に発注者へ移りません。
契約書に「譲渡する」と明記して、初めて移ります。

さらに注意が必要です。
将来サイトをリニューアルするとき、自社で自由に改修したいのであれば、譲渡の書き方まで見てください。
「翻案権および二次的著作物の利用に関する権利を含む、著作権のすべてを譲渡する」旨が必要です(改変する権利などは、契約書に明記しないと制作者側に残ると解されているためです。著作権法61条2項の考え方によります)。
加えて、制作者が著作者人格権を行使しない、という一文まであると安心できます。
ここまで書かれていれば、後から改修で制作者の許可が要る、という事態を避けられます。

⑤のサーバーとドメインも、見落とすと後で困ります。
これらが制作会社の名義になっていると、別の会社へ乗り換えるときにサイトを移せません。
同じURLやメールアドレスが使えなくなるリスクもあります。
自社名義になっているか、FTPなどの管理情報が引き渡されるかを確認してください。

もう一つ大切なのは、見積書と契約書を両方セットで確認することです。
追加費用の条件は、契約書よりも見積書に書かれていることが多いからです。
どちらか片方だけを見ていると、肝心の条件を見逃します。

なお、段階払いや中途解約、検収、公開後の無償対応については、この後のよくある質問でまとめて扱います。
ここでは深追いしません。

フリーランスに頼むときの契約の注意

フリーランスに頼むときの契約の注意

制作会社ではなく、フリーランス個人へ頼む場合の話もしておきます。
私自身がフリーランスなので、弱点も含めて正直に書きます。

まず、法律の面では以前よりルールが整いました。
2024年11月1日に、フリーランス保護新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が施行されました。
この法律で、発注者の側にも取引条件を書面などで明示する義務が課されました。
報酬の支払期日についても、成果物や役務を受け取った日から60日以内の、できる限り短い期間内と定められています。
個人相手だからルーズでいい、という時代ではなくなりました。

一方で、フリーランス個人には法人にない弱点があります。
担当者が一人しかいないため、その人が体調を崩したり廃業したりすると、引き継ぐ人がいません。
契約書の雛形も、弁護士監修でないことがあります。
ここは正直に、法人にはない弱点だとお伝えしておきます。

だからこそ、二つの目で見てほしいのです。
一つは、契約書の中身がきちんとしているかという書面の目です。
もう一つは、その人が信頼できるかという人となりの目です。
書面と信頼は、どちらか一方だけでは足りません。
両方が揃って初めて、安心して任せられます。

なお、契約書のひな型に不安があるときは、IPA(情報処理推進機構)と経済産業省がまとめた「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」が参考になります。
2020年12月に公開され、無料でダウンロードできます。
IT取引の標準的な考え方を知る材料として、目を通しておくと役立ちます。

よくある質問

修正は何回まで無料が普通ですか?

統一されたルールはなく、2回から3回を目安にする事業者が多いです。
ただ、回数より大事なのは「1回の定義」です。
軽微な文言変更を回数に含めない事業者もあれば、含める事業者もあります。
契約前に、何を1回と数えるかを確認しておくと、後でもめません。

制作費を全部払えば、著作権は自社のものになりますか?

いいえ、自動では移りません。
制作費の支払いと著作権の移転は、別の話になります。
契約書に「著作権を譲渡する」と明記されて、初めて発注者のものになります。
将来の改修まで見据えるなら、翻案権を含む全部譲渡と、著作者人格権の不行使まで書かれているかを確認してください。

契約書がないまま制作を進めても大丈夫ですか?

おすすめしません。
口約束は、もめごとの元になります。
きちんとした契約書が難しい場合でも、せめて見積書とメールで残してください。
作業範囲、修正回数、費用、納期、著作権の扱い、解約の条件です。
この六つを文面に残しておくだけで、いざというときの拠りどころになります。

着手金は返ってきますか?

着手した後の返金は、一般に難しいです。
すでに作業が始まっているためです。
発注者の都合で途中解約する場合、完成した部分の費用や、賠償の負担が生じることもあります(民法では、発注者は完成前ならいつでも解除できますが、その際に相手方の損害を賠償するのが原則という考え方です)。
リスクを抑えたいなら、着手金を大きくしすぎず、工程ごとに支払う段階払いにするとよいでしょう。

検収の期間や、公開後の無償対応はどれくらいが目安ですか?

検収は、実際に中身を確認できるだけの期間を確保してください。
数日で「問題なし」を求められると、見落としたまま完了扱いになります。
公開後の不具合対応についても、どこまでを無償で、いつまで対応するのか。
その範囲と期間を契約書で確認しておくと安心です。

サーバーとドメインは自社名義にすべきですか?

はい、自社名義にすべきです。
名義が制作会社になっていると、別の会社へ乗り換えるときに移せません。
同じURLが使えなくなり、そのドメインで使っていたメールも止まるリスクがあります。
契約の段階で、名義と管理情報の引き渡しを確認しておいてください。

まとめ:誠実な制作者を見極める3つの問い

契約書は、相手を縛るための盾ではありません。
発注者と制作者が、同じ絵を見るための地図です。
確認すべきなのは、相手を縛る条項ではありません。
ズレやすい境界線が、きちんと書面になっているかどうかです。

最後に、誠実な制作者を見極める三つの問いを渡します。
この三つに迷わず即答できる相手なら、信頼していいと思います。

  1. 著作権は、いつ、どの範囲で私に移りますか。
  2. 追加費用が発生する条件と単価を、先に教えてもらえますか。
  3. サーバーとドメインは、私の名義になりますか。

この三つは、私に対しても遠慮なく聞いてください。
むしろ、聞かれて困る制作者のほうを警戒してほしいのです。
もし今、契約書や見積書を前にして判断に迷っているなら、その内容を一緒に確認します。
どこがズレやすいか、どこを直せば安心か、対等な目線でお答えします。
気軽に相談フォームからお声がけください。

この記事を書いた人

宮地 健太朗

Web制作・運用を中心に、
中小企業・個人事業主のWeb活用を支援しています。

現在は、東京のWebマーケティング会社にてエンジニアとして参画し、サイト制作・運用改善・業務効率化などを担当しています。

単なる制作にとどまらず、
「どうすれば使われ続けるか」「どう改善すれば成果につながるか」を重視し、実務に即した提案と実装を行っています。

専門的な内容も、できるだけわかりやすく説明しながら、
一緒に考え、継続的に改善していくことを大切にしています。