数年前に作ったホームページを、そのままにしています。
更新もしていないし、中がどうなっているのかも分かりません。
それでたぶん何か問題があるのだろうとは、薄々思っています。
この記事は、そう思って検索した人に向けて書いています。
先に言っておくと、その直感は当たっています。
ただし、当たっている場所があなたの想像とは少しずれているかもしれません。
更新できていない理由は、だいたい似ています。
社内にホームページを触れる人がいません。
制作会社に頼むといくらかかるのか分からないし、聞くのも気が引けます。
そもそも何をどう更新すればいいのかが分かりません。
本業が忙しいなかで、売上に直結しない作業は後回しになります。
これは怠慢ではなく、優先順位の問題です。
そのうえで結論を先に書きます。
ホームページを放置したツケは、多くの場合、突然の事故としては来ません。
次にそのサイトへ手を入れようとしたときの、見積書と請求書として来ます。
私自身、7〜8年ほど放置されたサイトを引き継いだとき、通常の見積もりに十数万円を上乗せして請求したことがあります。
そのときに何が起きていたのかは、記事の後半で具体的に書きます。
なお私は、ホームページの保守・運用サービスを売っている側の人間です。
だからこそ、保守が要らないケースも含めて線引きを書きます。
「更新」には2種類ある

経営者と制作会社の会話が噛み合わないとき、原因はたいてい言葉のずれにあります。
「更新」という一語が、まったく別の2つの作業を指しているからです。
ひとつはコンテンツ更新です。
ブログの投稿、料金表の書き換え、スタッフ紹介の差し替え、施工事例の追加といった、中身の情報を新しくする作業を指します。
もうひとつはシステム保守です。
WordPress本体やPHPのバージョン更新、プラグインの更新、SSL証明書の有効期限管理、問い合わせフォームが正常に動いているかの確認といった、サイトを動かしている土台を維持する作業を指します。
経営者が「更新する時間なんてない」と言うとき、頭にあるのはほぼ前者です。
一方で制作会社が「更新しないと危ないですよ」と言っているのは、たいてい後者を指しています。
話が噛み合わないまま数年が過ぎる原因は、ここにあります。
そして重要な違いがひとつあります。
コンテンツ更新は、業種と戦略によっては任意です。
毎週ブログを書かなくても成り立つビジネスはたくさんあります。
けれどシステム保守は、CMSでサイトを動かしている以上ほぼ義務に近いものです。
つまり、ブログを書けていないことに罪悪感を持つ必要はありません。
恐れるべきなのは、土台のほうが止まっている状態です。
このあたりの考え方はホームページ保守はなぜ必要なのかでも整理しています。
放置したホームページで起きていること

サイトは止まっていても、周りは動き続けています。
PHPのバージョンは上がり、ブラウザの仕様は変わり、Googleの評価基準も更新され、競合他社はサイトを刷新します。
放置とは「何もしていない状態」ではありません。
周囲が動いているなかで、相対的に古くなっていく状態です。
そして厄介なのは、劣化の現れ方がリスクごとにまったく違うところです。
ある日いきなり表面化するものもあれば、何年も気づかれないまま損をし続けるものもあります。
セキュリティ:危ないのはWordPress本体よりプラグイン
セキュリティの話をすると身構えられるので、先に数字の意味を説明しておきます。
これから挙げるのは「報告された脆弱性の件数」であって、被害に遭う確率ではありません。
あなたのサイトが何パーセントの確率で乗っ取られるという話ではありません。
Patchstack社のレポート「State of WordPress Security in 2024」によれば、2023年にWordPress関連で新規に報告された脆弱性は5,948件でした。
2024年には、CVEに登録されたWordPress関連の脆弱性が7,966件に上っています。
その内訳は、プラグインが96パーセント(7,633件)、テーマが4パーセント(326件)、WordPress本体は7件です。
同社の「2025 mid-year vulnerability report」では、2025年の上半期だけで6,700件が報告され、うち89パーセントがプラグイン、本体は1件でした。
数字の並びを見て気づいてほしいのは、危険の中心がWordPress本体ではないという点です。
穴のほとんどは、後から追加したプラグインの側にあります。
問い合わせフォーム、予約システム、スライダー、SEO補助。
便利だからと入れたものが、そのまま止まっています。
そして本題はここからです。
更新を止めた時点から、未対応の穴は毎月積み上がっていきます。
1年放置すれば1年分、7年放置すれば7年分が、そのまま乗ったままになります。
借金の残高が増えていく感覚に近いといえます。
必ず攻撃されるとは書きません。
そうならないサイトも普通にあります。
ただ、確率が積み上がっていくことと、改ざんされたときの復旧に手間と費用がかかることは別々に成立します。
改ざんは今でも、四半期ごとに百件以上がJPCERT/CCに報告され続けています。
技術的陳腐化:ある日突然サイトが真っ白になる
セキュリティより先に困る人が多いのが、こちらです。
ホームページを動かしているPHPというプログラムには、バージョンごとにサポート期限があります。
php.netの公式情報では、PHP 8.1は2025年12月31日にセキュリティサポートを終えました。
2026年7月現在サポートされているのは8.2以降で、8.2も2026年12月31日に期限を迎えます。
以降は8.3が2027年、8.4が2028年、8.5が2029年です。
問題は、期限切れのまま動いているサイトが珍しくないところにあります。
WordPress.orgの公式統計(2026年2月)によると、サポートの終わったPHP 8.1以下で動いているWordPressサイトは4割強を占めています。
つまり、放置しているのはあなただけではありません。
そして期限が切れると、レンタルサーバー会社の側が対応を始めます。
セキュリティ上の理由から、古いPHPを強制的に新しいバージョンへ切り替える案内が届きます。
そこで何が起きるかというと、古いテーマや古いプラグインが新しいPHPで動かなくなります。
表示が崩れる、管理画面に入れなくなる、画面が真っ白になる。
サーバー会社からのメールを見落としていた場合、前触れなく起きたように感じます。
SSLの期限切れも同じ種類の事故です。
証明書が切れたサイトをChromeで開くと「保護されていない通信」と表示されます。
訪問者からすれば、その一行だけで信用が下がります。
気づかれにくいリスク:問い合わせフォームの無音の故障
一番損をしているのに、一番気づかれないのがこれです。
フォームに入力して送信すると、送信完了画面はきちんと表示されます。
けれど、あなたの受信箱に問い合わせメールが届いていません。
訪問者は送ったつもりでいて、あなたは来ていないと思っています。
背景のひとつに、2024年2月以降にGmailとYahoo!メールが導入した送信者要件の強化があります。
送信元のなりすまし対策(SPF・DKIM・DMARC)の設定に不備があると、受信側で迷惑メール扱いされたり、そもそも受け取ってもらえなかったりする場合があります。
サイトを作った当時は届いていたのに、途中から届かなくなるという現象が起こり得ます。
「最近ホームページから問い合わせが来ない」と感じているなら、来ていないのではなく届いていない可能性を先に潰したほうが早いです。
原因の切り分け方はホームページから問い合わせが来ない原因にまとめています。
SEOを壊すのは更新頻度ではなく、技術的な劣化

ここは、多くのWeb制作会社の記事と私の見方が分かれる部分です。
「更新しないと検索順位が下がります」と書かれているのをよく見ます。
ただ、Googleが公開している情報と、同社のジョン・ミューラー氏の発言に基づく限り、更新頻度の高さそのものが直接的な順位要因とはみなされていません。
Googleは「検索ランキング システムのご紹介」というドキュメントで自社のランキングの仕組みを公開していますが、そこに更新頻度を評価するという記述はありません。
ただし、鮮度がまったく関係ないわけではありません。
最新の情報が期待される検索では、鮮度が強く影響します。
今日の出来事、新しい製品、開催中のイベントといった検索意図では、古い情報は明確に不利になります。
では、放置したサイトの順位が落ちるのはなぜなのか。
経路は主に3つあります。
ひとつ目は、脆弱性を放置した結果として改ざんされ、検索結果から除外される場合です。
これは順位下落ではなく消滅に近い出来事になります。
ふたつ目は、表示の崩れや読み込み速度の低下です。
スマートフォンで見づらいサイトや、開くのに時間がかかるサイトは、訪問者にも検索エンジンにも評価されにくくなります。
3つ目は、競合の刷新による相対的な下落です。
自分のサイトが劣化していなくても、周りが良くなれば順位は下がります。
つまり「更新していないから下がる」のではなく、「技術的に劣化したから壊れる」というのが実際の順序です。
だとすると、対策としてまずやるべきなのはブログを毎週書くことではありません。
土台を保つことです。
では、その土台の劣化を放置したまま、次に手を入れようとするといくらかかるのか。
放置サイトを引き継いだら、見積もりが十数万円増えた

放置のツケは、多くの場合、事故ではなく請求書の形で来ます。
私が出した請求の話を書きます。
リニューアルの相談を受けた案件でした。
依頼主は、見た目を今風にしたいという意図で声をかけてくれました。
中身がどうなっているかについては、特に意識していない様子でした。
引き継いで中を開けたら、WordPressは4系のままでした。
最終更新からおよそ7〜8年です。
プラグインは全て未更新、スマートフォン表示への対応はなし、SSLも入っていませんでした。
この案件はサーバー移行も伴っていました。
古いバージョンのまま動いているサイトを、現行のサーバー環境へ安全に載せ替える作業は、技術的に難易度が上がります。
どのプラグインが移行後に動かなくなるかを事前に洗い出し、バックアップを取り、現行バージョンへつなぎ込んでいく必要がありました。
結果として、通常のリニューアル見積もりに十数万円を上乗せして請求しました。
月額の保守料に置き換えると、およそ1年分にあたる金額です。
依頼主は納得して、値切りもありませんでした。
理由は2つあったと思っています。
ひとつは、中がどういう状態だったのかを専門用語を使わずに全部説明したことです。
もうひとつは、依頼主自身も「たぶん古くなっているんだろうな」と薄々思っていたことです。
ここは正直に書いておきます。
結果的に、その作業は想定していたより早く終わりました。
それでも高く見積もらざるを得なかったのは、開ける前の段階では工数を確定できなかったからです。
中身が分からないサイトは、安く見積もれません。
制作側は最悪のケースを想定して数字を出すしかなく、その不確実性そのものに値段がつきます。
放置の本当のコストは、壊れることではなく、次に触る人が中身を確認できない状態にあります。
そしてこの上乗せ分は、月額の保守を払っていれば発生していません。
毎月バージョンを上げ、動作を確認していれば、開ける前から中身が分かるからです。
保守費用の考え方はWordPress保守費用の相場で相場感を整理しています。
この案件のように、そろそろ作り直したほうがいいのか迷っている方もいると思います。
リニューアルで効果が出るかどうかの見極め方はホームページ リニューアルの効果は本当に出るのかで整理しています。
保守が要らないケースもある

全てのサイトに保守契約が必要だとは思っていません。
リスクの大きさは、サイトの作りと役割で決まります。
保守の優先度が低いのは、たとえば次のようなケースです。
ひとつは、静的なHTMLだけで作られていて、問い合わせフォームも持っていないサイトです。
更新の仕組みを持たない分、壊れる要素も少なくなります。
ふたつ目は、WixやSTUDIOのように、サービス提供側が基盤を管理しているサイトです。
利用者が自分で本体やプラグインを更新するという作業が、そもそもありません。
ただし独自ドメインの更新、フォームの動作、掲載情報の鮮度は別問題として残ります。
3つ目は、社内に更新できる担当者がいて、実際に運用が回っているサイトです。
この場合に必要なのは、外注ではなく体制の維持です。
ここで、自分でできる範囲とプロが必要な範囲を分けておきます。
自分でできるのは、管理画面の更新ボタンを押すことと、掲載している情報を書き換えることです。
これは特別な技術ではありません。
プロが必要になるのは、その先です。
更新した結果サイトが壊れたときに、元に戻す作業です。
更新すると不具合が出るプラグインを、事前に判断する作業です。
バックアップが本当に復元できる状態なのかを、検証する作業です。
改ざんされていないかを、継続的に検知する作業です。
本当の問題は、ボタンを押せるかどうかではありません。
壊れたときに誰が直すのかです。
そのうえで、線引きははっきり書きます。
WordPressで動いていて、そこから問い合わせを受けているのなら、放置は選択肢に入りません。
今日できる自己点検

現状を知らないまま不安でいるより、10分で分かることを先に確認したほうが早いです。
以下は、専門知識がなくても自分でできる確認です。
- サイトのURLが「https」で始まっているか。ブラウザのアドレスバーに「保護されていない通信」と出ていないか。
- スマートフォンで開いて、文字がはみ出したり画像が崩れたりしていないか。
- WordPressの管理画面に、今もログインできるか。
- 問い合わせフォームから自分宛にテスト送信して、実際にメールが届くか(迷惑メールフォルダも確認してください)。
- 掲載中の営業時間・料金・スタッフ情報が、現在の内容と合っているか。
- サーバーとドメインの契約者名義と支払い方法を把握しているか。
このうち4番と6番は、特に見落とされます。
フォームの故障は誰も教えてくれませんし、契約情報は前の担当者しか知らない場合があります。
そして、前の制作会社と連絡が取れないという相談もよく受けます。
廃業していた、担当者が退職していた、なんとなく疎遠になった。
どれもよくある話で、気まずく思う必要はありません。
サーバーとドメインの管理権限さえ手元にあれば、引き継ぎはできます。
まず確認すべきは、ログイン情報がどこにあるかです。
放置している自覚があるなら、その感覚は正しく働いています。
まとめ
ホームページの放置は、ある日突然サイトが乗っ取られる話としてはあまり起きません。
起きるのは、次に手を入れようとしたときに見積もりが膨らむことと、問い合わせが届かないまま何年も過ぎることです。
そして保守とは、ブログを書き続けることではありません。
サイトという動線が今も機能しているかを、定期的に点検し続ける仕事です。
先ほど書いた十数万円の案件で、依頼主が値切らなかった理由をもう一度書きます。
中がどうなっているかを最初に全部説明したことと、依頼主自身も薄々そう思っていたことです。
私の仕事は、まず現状を正確に説明するところから始まります。
そのうえで、必要な作業と要らない作業を分けて提示します。
この記事で保守が要らないケースまで書いたのも、同じ考え方によるものです。
現状が分からないまま不安を抱えているなら、まずサイトの状態を見せてください。
WordPressのバージョン、プラグインの状態、フォームが動いているかを確認して、今やるべきことと当面やらなくていいことをお伝えします。
継続的な保守が必要と判断された場合は、ベーシック保守プランを月額11,000円(税込)でご用意しています。
まずは現状の確認だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

