最初に、正直にお断りしておきます。
私はWebサイトの制作と保守を請け負うフリーランスです。
立場でいえば、外注される側の人間です。
つまりこの記事には、外注を勧めたほうが自分の仕事につながるという利益相反があります。
それを承知のうえで、この記事ではできるだけフラットに書きます。
理由は単純で、無理に外注させても後で続かないと、私自身が結局困るからです。
内製で回るなら、そのほうがいいと正直にお伝えします。
そのうえで結論を先に言います。
Web集客を内製にするか外注にするかは、やる作業を並べても決まりません。
決め手は、社内に「分かっていて、なおかつ手が動く人」がいるかどうかです。
その人がいなければ、内製の話はそもそも先に進みません。
この記事で扱うのは、外注すると決めるまでの判断だけです。
外注先の選び方や、外注で失敗した後のリカバリーは、それぞれ別の記事に譲ります。
まずは自社が内製できる状態なのかどうか、その見極めから一緒に整理していきましょう。
「内製か外注か」を作業で分ける前に、多くの会社がつまずく理由

多くの解説記事は、作業の種類で内製と外注を割り振ります。
「SEOは社内で、広告運用は外注で」といった切り分けです。
考え方としては筋が通っています。
ただ、その切り分けには前提があります。
社内にその作業を実行できる人がいる、という前提です。
私が相談を受けている実感では、中小企業ではこの前提が最初から崩れていることが少なくありません。
データを見ても、状況はうかがえます。
総務省の令和6年版情報通信白書によると、中小企業でデジタル化に「未実施」と答えた企業は約70%にのぼります。
株式会社ペライチが2025年3月に公表した「マーケティング活動のデジタル化に関する実態調査」(n=512)では、デジタルマーケティングの実施率はわずか6.1%でした。
この数字が示しているのは、多くの会社が「内製か外注か」を悩む手前にいるという事実です。
そもそもまだ着手できていない段階にいます。
作業をどう割り振るかという議論は、実行する人がいてはじめて意味を持ちます。
私のところに相談が来るときも、社内でやれる人がいないというケースがほとんどです。
だからこの記事では、作業の分類に入る前に、まず「うちは内製できる状態か」を先に見ます。
その見極めの物差しを、次の章で2つに絞ってお渡しします。
内製か外注かは、この2軸で決まる

判断の軸は2つだけです。
1つ目は、社内にWeb集客が分かる人がいるかどうか、つまり知識です。
2つ目は、その人がWeb集客に割く価値のある時間を取れるかどうか、つまり時間です。
ここで言う時間には、少し注意が必要です。
「たまたま空いている時間」ではありません。
その人がWeb集客に取り組むだけの価値がある時間、という意味です。
なぜこう定義するかというと、この一言に機会コストが畳み込まれているからです。
社長やベテラン社員は、たいてい何かしら手が空く瞬間があります。
けれどその時間で商談や接客や制作をやったほうが会社が稼げるなら、集客に回すのは実は損です。
だから単なる空き時間ではなく、そこに割く価値があるかどうかで見ます。
4つのパターンで自社の位置を掴む
この2軸を掛け合わせると、4つのパターンに整理できます。
知識があって時間もあるなら、内製が合理的です。
分かる人がいて、その人が動ける状態なので、社内で回せます。
知識はあるが時間がないなら、分かるけれど手が動かない状態です。
この場合は、その人の負担を軽くする形で一部を外注に回すのが現実的です。
知識はないが時間はあるなら、やれるけれど分からない状態です。
外注しつつ、その業者からノウハウを移してもらう形が向いています。
知識も時間もないなら、外注が中心になります。
ただしこの場合でも、発注を管理できる最低限の知識だけは社内に必要です。
まったくの丸投げにすると、後で高くつきます。
データからも、分かる人がいない現実は裏づけられます。
株式会社kubellが2025年11月に公表した「中小企業のデジタル化に関するアンケート調査」(n=1,093)では、システム担当者がいない中小企業が27.5%でした。
従業員10〜29人の規模に絞ると、その割合は48.2%まで上がります。
IPAの「DX動向2024」でも、DX推進人材の量が大幅に不足していると答えた企業が62.1%、質が大幅に不足していると答えた企業が約58%となっています。
私の実感を添えると、会社の規模はあくまで目安にすぎません。
規模が大きければ、社内に一人くらいはできる人がいることもあります。
ただWeb集客は専門性が高いので、多少規模が大きくても分かる人がいないことは意外と多いです。
逆に、小さい会社でも社長自身が詳しいというケースもあります。
もう一つ、当事者として正直に書いておきます。
私は自分の事業でも、一部の作業を外注しています。
知識も時間もあるように見える作業でも、その時間を単価の高い作業に使ったほうが得なら、外注が正解になるからです。
これは制作者としての建前ではなく、一人で事業を回している人間の実際の判断です。
だからこの2軸で見るときは、規模の大小に引っ張られないでください。
分かる人が社内にいて、その人がそこに時間を割く価値があるか。
本質はこの一点にあります。
【自己診断】5問で、うちは内製向きか外注向きか

言葉で軸を説明されても、自社がどちらなのかは掴みにくいものです。
そこで、その場で当てはめられる5問を用意しました。
YESかNOかで、正直に答えてみてください。
1問目です。
社内に、Web集客の仕組みを人に説明できる人がいますか。
なんとなく知っているではなく、他人に手順を教えられるレベルかどうかで見てください。
2問目です。
その人は、Web集客に毎週まとまった時間を継続して割けますか。
一度きりではなく、半年先も同じペースで続けられるかどうかです。
3問目です。
その時間を本業に使うより、集客に使うほうが会社にとって得ですか。
その人の一番得意な仕事と、集客作業を天秤にかけて考えてください。
4問目です。
外注業者から提案が来たとき、その良し悪しを判断できる人がいますか。
金額の妥当性や、提案が的外れでないかを見抜けるかどうかです。
5問目です。
半年から1年、腰を据えて集客に取り組む体制がありますか。
Web集客は短期で結果が出にくいので、続ける前提が要ります。
YESが多かったなら、内製で回せる可能性が高いです。
社内に人がいて、時間もあって、続ける体制もあるという状態です。
YESとNOが半々なら、一部だけ外注する形が合っています。
たとえば分かる人はいるが時間がない、という2問目でつまずくパターンです。
NOが多かったなら、外注が中心になります。
ただし4問目のYESだけは、外注を選ぶ場合でも欠かせません。
提案の良し悪しを誰も判断できないまま発注すると、丸投げに近づいてしまうからです。
今すぐ方向を決めたい方は、まずここで自社の位置を掴んでみてください。
そのうえで、内製向きだった方には次の章を、外注向きだった方はその次の章を読んでいただければと思います。
内製で十分なケースを、外注される側だからこそ正直に書く

私は外注される側なので、本来なら「外注しましょう」と書いたほうが得です。
それでも正直に言うと、内製で十分に回るケースはあります。
そこに無理やり外注を押し込む必要はありません。
分かりやすいのは、やることがシンプルで、それだけで集客が成り立っている場合です。
たとえば地域密着型の店舗が、SNSの更新やブログの更新を中心に発信していて、それで来店につながっているケースです。
こうした状態なら、外注費をかけずに社内で続けるほうが理にかなっています。
もう少し踏み込んで、手法ごとの内製のしやすさを整理してみます。
下の表は、あくまで一般的な目安です。
外注費の金額は公的な統計ではなく、規模や難易度で大きく変わる相場の幅としてご覧ください。
| 手法 | 内製のしやすさ | 立ち上げにかかる時間 | 外注費の目安(相場の幅) |
|---|---|---|---|
| SNS運用 | 比較的やさしい | 短め | 月5万〜50万円 |
| ブログ・コンテンツ制作 | 中くらい | 中〜長め | 記事単位で変動 |
| SEO(検索対策) | 難しい | 長め | 月10万〜80万円 |
| Web広告運用 | 難しい | 中くらい | 広告費の15〜25%程度 |
表の外注費は、断定できる数字ではありません。
同じSEOでも、既存サイトの改善なのか、ゼロから設計するのかで金額はまったく変わります。
あくまで見当をつけるための幅として受け取ってください。
自社の集客が、この内製で回る型に当てはまっているとします。
それなら、外注しないという判断が正解です。
うまくいっているやり方を、わざわざ外に出す必要はありません。
外注が向くケースと、丸投げにしないための最低条件

一方で、外注が合理的なケースもはっきりしています。
知識も時間もなく、しかも施策の専門性が高い場合です。
技術的なSEOや、広告運用や、データ分析といった領域がこれに当たります。
難しい領域ほど、外注に回っています。
株式会社PLAN-Bが2025年3月に公表した「中小企業のマーケティング体制と外注活用の実態調査 2026」(n=200)では、何らかの業務を外注している中小企業が60.5%でした。
同じ調査で、内製すると特に困る業務として挙がったのは、データ分析が37.0%、コンテンツ制作が36.0%、戦略設計が29.0%です。
自社だけでは手に負えない領域が、そのまま外注に流れているのが読み取れます。
ここで、外注する側として私自身が経験した苦い話を一つだけ書きます。
以前、外注したものを自分で品質確認せずに、そのままクライアントへ納品したことがあります。
結果、質が低いという評価になり、その仕事の料金は支払われないまま終わりました。
正直、外注先のせいにしたい気持ちがまったくなかったとは言いません。
ただ、発注して納品したのは自分です。
責任者は自分なので、そこは割り切りました。
この経験からお伝えしたいのは、失敗の後始末の話ではありません。
発注する前に「丸投げにはしない」と決めておくべきだった、という手前の教訓です。
外注は、誰かに預ければ勝手に良い結果が返ってくる仕組みではないからです。
丸投げにしないための最低条件は、いくつかに絞れます。
戦略と目標は社内で持つことです。
成果の定義を、発注する前に決めておくことです。
そして、発注した内容の良し悪しを管理できる人を社内に置くことです。
先ほどの自己診断の4問目が欠かせない、と書いたのはこのためです。
外注先そのものの見抜き方については、別の記事で詳しく書いています。
契約前に何を確認すればいいのかは、外注先の選び方の記事にまとめました。
外注して失敗した後にどう立て直すかは、外注の失敗とリカバリーの記事に譲ります。
この章でお伝えしたいのは、一点だけです。
外注は、管理をゼロにすることではありません。
管理する人を社内に残したうえで、実行だけを外に出すという発想です。
それでも決められないなら「3ヶ月だけ内製でテスト」して数字で決める

ここまで読んでも、決めきれない方はいると思います。
知識も時間も微妙で、内製とも外注とも言い切れないケースです。
そういうときは、期限を切って内製で試し、数字を見て決めるのが確実です。
やり方はシンプルです。
まず3ヶ月と期間を区切ります。
その間、社内で実際に集客の作業を回してみます。
3ヶ月後に見るのは2つです。
1つは、更新や作業を最後まで継続できたかどうかです。
もう1つは、記事1本や施策1つに、実際どれだけの時間がかかったかです。
判定の線引きも先に決めておきます。
続かなかったなら、その領域は社内では回りません。
記事1本に想定の2倍以上の時間がかかったなら、その人の時間の使い方として割に合いません。
どちらかに当てはまったら、その領域は外注に回すと数字で確定します。
大事なのは、これを先送りにしないことです。
「とりあえず様子を見る」で終わらせると、半年後も同じ場所で迷い続けます。
期限と判定ラインを決めておけば、迷いは検証で決着します。
判断を宙づりにせず、数字で答えを出しましょう。
まとめ:作業ではなく「人」で決める
Web集客を内製にするか外注にするかは、作業の種類では決まりません。
決め手は、分かる人が社内にいるか、そしてその人がそこに時間を割く価値があるかの2軸です。
会社の規模は、あくまで目安にすぎません。
最後に、私の本音を書きます。
ここまで軸や診断を並べてきましたが、結局はヒアリングしてみないと分からないことも多いです。
分かる人がいるつもりでも本業で手が回っていなかったり、いないと思っていたら社長が実は詳しかったり、実際に話すと見え方が変わります。
なので、迷っているなら一度、自社の状態を棚卸ししてみてください。
社内に分かる人がいるか、その人が時間を割けるか、この記事の5問を当てはめるだけでも方向は見えてきます。
それでも判断がつかないときは、相談してもらえればと思います。
私は制作と保守を請け負う立場ですが、内製で十分に回りそうなら、その旨をそのままお伝えします。
無理に外注へ誘導するつもりはありません。
実際、地元の会社とは近所という距離感のまま長くお付き合いが続いていて、必要なときだけ手を貸す形も珍しくありません。
自社の状況を整理する壁打ち相手が必要でしたら、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
